同じ外壁塗装でも、その年の経費になるかは「工事の中身」で変わります
アパートの外壁塗装は、数百万円になることもある大きな支出です。全額をその年の修繕費にできるのか、資本的支出として何十年もかけて減価償却するのか。判断の基準と、その判断を左右する見積書・工事記録の整え方を、賃貸物件の塗装も手がける創業70年の塗装店がお話しします。
「外壁塗装の費用は、全部その年の経費にできるんですよね?」。アパートやマンションのオーナー様から、こうしたご質問をいただくことがあります。答えは「多くの場合は修繕費として扱われますが、工事の内容によっては資本的支出になることもある」です。
この違いは、その年の所得や税額に大きく関わります。そして、どちらになるかの判断には、見積書や工事の記録に何が書かれているかが深く関係しています。この記事では、修繕費と資本的支出の基本的な考え方と判定の基準、そして塗装店の側からオーナー様にできる準備について、順を追ってご説明します。
修繕費と資本的支出、何が違うのか
建物にかけた費用は、税金の計算上、大きく2つに分けられます。
- 建物の通常の維持管理や、壊れた部分を元の状態に戻すための支出
- 支出した年(事業年度)の経費として、全額を計上できる
- 建物の価値を高めたり、使える期間を延ばしたりする支出
- いったん資産として計上し、耐用年数にわたって減価償却で少しずつ経費にする
同じ金額の工事でも、修繕費ならその年の所得から全額を差し引けますが、資本的支出なら、その年に経費にできるのは減価償却費の分だけになります。たとえば数百万円の工事であれば、その年の所得や税額への影響は大きく変わってきます。
ここで大切なのは、どちらに当たるかは「工事の名前」ではなく「工事の中身」で判断される、という点です。「外壁塗装」という名前の工事でも、その中身が元の状態に戻すものなのか、建物の性能を高めるものなのかによって、扱いが分かれる可能性があります。
外壁塗装はどちらになりやすいのか
一般的に、経年で傷んだ外壁を塗り直して、元の状態に近づける塗装工事は、建物の通常の維持管理として修繕費に当たると考えられています。過去の国税不服審判所の判断でも、建物の維持管理に必要な塗装工事や防水工事が修繕費として認められた例があります。
一方で、次のようなケースでは、資本的支出に当たるかどうかが検討されることがあります。
- 以前よりも明らかに性能の高い塗料に変え、耐久性を大きく高める場合
- 遮熱や断熱といった、もともと建物になかった機能を新たに加える場合
- 外壁材そのものを張り替えたり、上から新しい外壁材を重ねたりする場合
- 屋根の葺き替えやカバー工法など、建物の部分を新しく作り直すような工事を含む場合
ただし、塗料のグレードを上げたからといって、ただちに資本的支出になるとは限りません。塗料は年々改良されており、現在の標準的な塗料が、10年前の塗料より性能が高いのは自然なことでもあります。どこまでが「元の状態に戻す」範囲で、どこからが「価値を高める」範囲なのかは、工事の目的や内容を総合して判断されます。
判定の流れ|金額・周期・割合の基準
修繕費か資本的支出かの判断は、ときに難しいものです。そのため国税庁の通達では、一定の金額や周期、割合をもとに判定できる基準が示されています。おおまかな流れを図にまとめました。
金額と周期の基準
1つの修理や改良にかかった費用が20万円未満の場合や、おおむね3年以内の周期で行われる修理の場合は、修繕費として扱うことができるとされています。ただ、アパートの外壁塗装は一般に10年前後の周期で、金額も数百万円になることが多いため、この基準に当てはまるケースは多くありません。
判断がつかない場合の基準
修繕費か資本的支出かがはっきりしない支出については、その金額が60万円未満である場合、または建物の前期末の取得価額のおおむね10%以下である場合に、修繕費として扱うことができるとされています。
割合による区分の特例
それでも区分が難しい場合には、継続して同じ方法をとることを条件に、支出額の一定割合を修繕費、残りを資本的支出として処理する特例も設けられています。どの基準を使えるか、どう適用するかは、法人か個人か、これまでの経理の方法によっても変わりますので、顧問の税理士さんとよく相談してください。
資本的支出になったときの減価償却
資本的支出と判断された部分は、建物本体とは別の資産として計上し、原則として建物本体と同じ耐用年数で減価償却していきます。建物の減価償却は定額法で行うのが原則です。住宅用の建物の主な法定耐用年数は、次のとおりです。
| 建物の構造 | 住宅用の法定耐用年数 |
|---|---|
| 木造 | 22年 |
| 軽量鉄骨(骨格材の厚さ3ミリ以下) | 19年 |
| 軽量鉄骨(骨格材の厚さ3ミリ超4ミリ以下) | 27年 |
| 重量鉄骨(骨格材の厚さ4ミリ超) | 34年 |
| 鉄筋コンクリート造 | 47年 |
※国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」より、住宅用の建物の例を抜粋しています。
木造の耐用年数22年の定額法の償却率は0.046です。
220万円 × 0.046 = 年およそ10万1,200円
工事を行った年は、使い始めた月からの月割りになります。全額を修繕費にできた場合とくらべると、その年に経費にできる金額が大きく変わることが分かります。
資本的支出になると、その年の経費は少なくなりますが、そのぶん将来の年に経費が分散されます。どちらが有利かは、その年の所得の状況や、ほかの物件の修繕計画によっても変わるため、一概には言えません。大切なのは、工事の前に「この工事はどちらに当たりそうか」を税理士さんと共有し、資金計画と税金の見通しを立てておくことです。
判断を左右する「見積書と工事記録」
修繕費か資本的支出かを判断するとき、税理士さんや税務署が確かめるのは、「その工事で何をしたのか」です。そして、それを説明する材料になるのが、見積書や請求書、工事の記録です。「外壁塗装工事 一式」とだけ書かれた見積書では、工事の中身を説明することができません。
塗装店の立場から、オーナー様のためにできる準備は次のようなものです。
吉田塗装店では、工程ごとに内訳を分けた見積書をお出しし、工事のあとは、下塗り・中塗り・上塗りの各工程と使った塗料缶を写真に収めた完了報告書をお渡ししています。工事前の傷みの状態も写真でご説明しますので、税理士さんとのご相談の資料としてもお使いいただけます。
オーナー様が工事の前に考えておきたいこと
外壁塗装を、税金の面でも経営の面でも納得のいく工事にするために、工事の前に次のことを整理しておくのがおすすめです。
工事の目的を決めておく
傷んだ部分を元に戻すことが目的なのか、建物の価値を高めて入居率を上げることが目的なのか。目的によって、選ぶ塗料や工事の範囲、そして税金上の扱いの見通しが変わってきます。
工事の時期と決算の時期を合わせて考える
どの年(事業年度)の経費にしたいのかによって、着工と完了の時期を調整することもできます。とくに年末や決算期の前後に工事を考えている場合は、余裕を持って計画を立てましょう。天候によって工期が延びることもあるため、ぎりぎりの日程は避けるのが安心です。
屋根や付帯部の工事との組み合わせを考える
足場を立てる外壁塗装の機会に、屋根や雨どい、鉄部の階段や手すりなどの手入れをまとめて行うと、足場の費用を一度で済ませられます。ただし、屋根の葺き替えやカバー工法などを含めると、工事の性質が変わる場合もあるため、工事ごとに分けて考えておくと整理しやすくなります。
長期の修繕計画の中で考える
外壁、屋根、鉄部、防水などは、それぞれ手入れの周期が違います。物件ごとの計画的なメンテナンスの見通しを持っておくと、毎年の支出のばらつきを抑え、税金の計画も立てやすくなります。
入居者様への配慮も、資産を守る工事の一部
アパートの外壁塗装では、入居者様が暮らしながら工事を進めることになります。工事中の不便が大きいと、入居者様の満足度が下がり、退去のきっかけになってしまうこともあります。
- 工事の前に、期間や作業内容、洗濯物を干せない日などを書面でお知らせする
- ベランダの私物の移動や、窓を開けにくい期間について、早めにお伝えする
- 駐車場や駐輪場、通路の使い方について、安全に配慮して調整する
- 塗料のにおいや作業の音について、時間帯に配慮する
きれいになった外観は、入居を検討している方の第一印象を大きく左右します。工事中の配慮と仕上がりの美しさの両方が、物件の価値と入居率を守ることにつながります。
「外壁と屋根は、家を守る鎧です。」
賃貸物件にとって、外壁と屋根は建物を守る鎧であると同時に、入居者様をお迎えする顔でもあります。オーナー様の大切な資産を長く守るために、工事の中身を正確に記録し、税理士さんとのご相談にも役立つ形でお伝えすることも、私たちの仕事だと考えています。
- 昭和30年(1955年)創業から70年。豊川市を拠点に、施工実績は6,000棟以上
- 国家資格の一級塗装技能士が7名在籍
- Googleクチコミは4.8点・114件(記事作成時点)
- 工事内容に応じて5〜10年(最長10年)の保証書を書面で発行
- AGC(旭硝子)ルミステージ、ガイナ(日進産業)の認定塗料を取り扱い
- 下塗り・中塗り・上塗りと塗料缶を写真で記録した完了報告書をお渡し
- ドローンを使った屋根診断を無料で実施
アパートの外壁塗装、まずは内訳の分かる見積もりから
建物の状態の診断から、工程ごとに分けた見積書のご用意まで。
工事の時期や修繕計画のご相談もお気軽にどうぞ。
株式会社吉田塗装店 愛知県豊川市光明町1丁目6-1(マチニワとよかわ前)
対応エリア:豊川市・豊橋市・蒲郡市・新城市ほか東三河全域
※本記事は、国税庁の通達等で示されている一般的な考え方(2026年10月時点)をもとに、外壁塗装に関わる部分をまとめたもので、個別の税務判断を行うものではありません。修繕費と資本的支出の区分や減価償却の方法は、建物の状況、工事の内容、法人か個人か、経理の方法によって異なります。実際の処理は税理士または税務署にご確認ください。Googleクチコミの評価・件数は記事作成時点のものです。


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